死んだように眠るから、本当に、死んでいるのかと思った




だるそうに、君は帰ってきた。
「疲れてる?ご飯食べる?お風呂はいる?」
僕は君に問うた。
「んー・・・イラナイ。もう寝るわ」
そう言って 君は部屋へと戻っていった。



顔色も悪かったし、元気もなさそうだった。
でもとりあえず何か食べさせないとと思って
喉に通りやすい 雑炊を君の元へと持っていった。



僕がドアを開けた音に気づいたのか、君が体を起こした。
「ごめん、起こした?」
「ううん。大丈夫」
君は長い髪をひとつにまとめた。



「やっぱなんか食べないとさ、」
僕が言うと 君は笑った。
「なぁに、主夫みたいじゃない」
「だって君のほうが僕より忙しそうじゃないか」
実際、料理も掃除も苦手な君。
放っておいたらすぐに部屋も汚くなる。
コンビニ弁当しか食べないし
僕がいないと なんにもできない。



「ありがとう、わぁ、卵雑炊?私これ好き」
君はニコニコして雑炊を口に運んでいった。
僕は似合わないエプロンを脱いで、ベッドのそばに座った。



「最近、いつもより忙しそうだね」
君は、僕の事を軽く見ると、にっこり笑った。
「大丈夫よ、私タフだもん」
「でもさ、君は女の子だもん。顔が疲れてる」
もし、病気にとかなったりしたら。
「なんかあるんなら手伝うからさ、言ってよ」



我ながら女々しいな、とは思うけれど
それは君を思うが故のことで



「あんた可愛いねぇ。そんなに私のことが好き?」
君はそう言って僕の頭をなでた。
「うん、めっちゃ好き」
僕は真剣に答えた。
君はきょとんとして、 そして笑った。
「ありがとう、ちゃんと言うからさ」



「本当だよ?ちゃんと言えよ?」
「はいはい。あれ、なんでエプロン脱いだの?可愛かったのに」
「え・・・だってキモいじゃん僕」
「やーだ。着なさい!」
「マジっすか・・・」



そうやって、はぐらかされてしまう。
勝てないなぁ、、、君には。



そのうち、君は本当に疲れているのか寝入ってしまった。
食器を片付けようと君の近くに行く。
髪をなでてみる。



「過労死なんかされたら困るって」
僕は そうつぶやいて笑った。



死んだように眠るから、本当に、死んでいるのかと思った。
そう思うと 僕は怖くなってしまった。



そうならないようにするためにも、
僕が君を守らないと、ね。