くすんだ映像 音の無い声 それはモノクロームで彩られて




抽象的じゃないリアル なんて信じたくなくて
現実の世界から逃げたくてしょうがなかった。



「なあ 僕っていつ自由になれるの?」
僕は空気に向かって問いかけた。
もちろん 返事なんか返ってくるわけがなくて
壁に反響した自分の声がただ 響いた。



テレビをつけても 砂嵐しか目に入らなかった。
僕を喜ばせてくれるもの
どきどきさせてくれるもの
そんなもの なにひとつ なかった。



あああああああああああ
なんでこんなに さびしいんだろう
なんでこんなに かなしいんだろう



僕の叫び声は 空を切って
キィンと僕の耳にだけ こだました。
寂しさに押しつぶされたくなくて 僕はうたをうたった。
少しでも 幸せになりたくって、
一人きりでも どれだけ幸せになれるんだろうかと



そんなもの なかった。
人は 一人っきりでは生きてなんかいけない
無意識に 僕のうたで 僕は 泣いていた。



くすんだ映像 音の無い声 それはモノクロームで彩られて
僕を さらに独りにさせた。



透明な世界を欲した
現実というリアルを憎んだ
オールカラーの世界なんかもう消え失せていて



僕自身が ここから 出なければいけないんだ