雑音から逃れるために、ヘッドフォンで耳を塞いだ




小さいころから、煩いのは嫌いだった。
自分の世界を邪魔されたくなかった
と言ったほうがいいのか。
なんて言ったらいいのかはわかんないけど、
言える事は、
音楽が好き ってことだけだった。



友達と町を歩いた。
喋ることは嫌いではなかったけれど
自ら話題を出すとか、そんなことは滅多になかった。



「お前は、俺のことが嫌いなのか?」
以前、友達にこう聞かれたことがあった。
俺は笑って
「そんなハズはないだろ?」
と答えた。
「でも、お前いっつもつまんなそうじゃん」



そのときのこいつの言葉がやけに俺の中に残っている。
図星ってわけじゃなかったのに
胸が痛かった。



俺は友達と一緒にいるということを拒んでいるのだろうか?
友達を嫌いだなんて思ったこともないし
寧ろ、嫌われるのが怖かった。
いいカッコして、好かれようと頑張った。



無駄な 努力だったんだろうか?
疲れて見えていたのだろうか。



「なぁ、聞いてるのかよ?」
アイツが俺の顔を覗き込んできて、ふとわれに返った。
「お前っていつも音楽聞いてるんだな」
「うん、・・・好きだからさ、音楽」
集中するにも、なにするにも音楽が必要だった。
「ふーん、なんでもいいけど、こういう時にヘッドフォンはよそうぜ」



痛かった。
痛いところをつかれた、と思った。
そっか、そうだよな。
喋ってるのにヘッドフォンで音楽聴いてるなんて


し つ れ い だ よ な 。



俺は「ごめん」と一言言って、その場から去った。
電車に乗り込み、ため息をつく。



俺は、 嫌な人間だよな。



独りに、なりたかった。
誰にも、邪魔されたくなかった。
俺だけの世界に 入っていきたかった。



雑音から逃れるために、ヘッドフォンで耳を塞いだ。
このままどっかに墜ちれればいいと思った。